マスターのひとりごと(インフォメーション)
え~と、以前からすごく気になってて書きたかった事なんですが、粗食がもてはやされ、日本型食生活がもてはやされ、「食育」なるものが謳われておりますが、なんかですね、すごく勘違いされやすい危うさを感じるんですね。
こういうものを取り上げられる場面では決まって米飯賛美で、伝統食賛美なんですね。日本型食生活が悪いというわけじゃないんですよ。ただ、その言葉のもつイメージというか連想する食事がどの時代の食事を思い浮かべるもんだろうか?と考えた時にちょっと…?かなと思うわけです。
理想的な日本型食生活を満たした時代というのは1970~1975年頃、つまり日本が豊かになって輸入食材も増加し、洋食化が進んで栄養素摂取量が理想的なバランスに近づいた時代なんですね。それ以前の日本の食生活については、あまりほめられたものじゃないことは厚生労働省の国民栄養調査などを見るとあきらかです。
例えば、1975年の平均摂取カロリーは2226kカロリーで、エネルギー比率はタンパク質0.15、脂質0.22、炭水化物0.63なんですね。
適正な脂肪エネルギー比率といわれるのは20~25%ですが、1970年に入ってようやく19%でした。それ以前の脂肪摂取量はきわめて低く、脳卒中などの脳血管疾患が日本人の主な死亡原因で断然トップでした。当時の日本人の脳卒中による死亡の主原因が、低い脂肪摂取量にあったことはあきらかです。血清コレステロール値が高いと心臓病死亡率 が増え、血清コレステロール値が低いと、今度は脳血管疾患が増えます。血清コレステロール値は、脂肪、特に動物性脂肪の摂取量と相関しているんですね。つまり極端に偏った日本食ばかりを摂取しつづけると、脳卒中のリスクが高くなる可能性もあるため、肉も適度に摂取する必要があるわけです。
コレステロールは細胞膜の成分だから、それが少ないと細胞膜が弱くなる。だから脂肪の摂取量が低いと血管が弱くなり、脳卒中が増えると考えられるわけです。そこから、脂肪摂取比率には下限が定められていて、それは20%ということになっているんですね。
「日本型食生活」といわれて思い浮かべるのは、まぁ、年代にもよるでしょうけど、1970年代より以前の食事を思い浮かべる人も多いと思います。しかしながらその時代の食事は、「健康的」ではないという事実。
とにかく質素で、アッサリ、さっぱりが体に良いのだ、粗食が体に良いのだという思い込み。
健康的な食生活とはあくまで栄養素のバランスがとれたものなんですよね。
そうした視点から見ると「粗食」「日本型食生活」という言葉は、日本の「伝統的」 食生活が体にいいのだという誤った情報を流布しかねない危険性を含んでいると私は考えます。